トレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。
第1回はこちら
実家の裏庭にアスパラが自生してます
みなさんこんにちは。蔵人です。
前回の準備編で、トレース作業に入る準備はできました。
それではいよいよ実際のトレースに着手してみます。
本日のチェック項目は以下のようになっています。
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第2回 ~胴体~
◆なぜこの順番でトレースするのか?
◆センター
◆上半身
◆下半身
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◆なぜこの順番でトレースするのか?
なぜ最初に胴体部分(体幹)からトレースするのでしょうか?
今回のトレースは標準ボーンのみで行なっているため、
モデルは腕IK(※)やキャンセルボーン(※)を持っていません。
そのため、体幹の動きが指先やつま先といった末端までダイレクトに伝わります。
ゆえに、体の中央から末端に向けてモーションを作って行くことが基本となります。
例えば上半身より先に腕を作ってしまうと、
後で上半身をひねった場合、それに連動して腕の位置も変わってしまうからです。
※腕IKやキャンセルボーンの詳細については本筋から離れますので、
興味の有る方は下記の動画をご覧下さい。
というわけで、通常の人型モデルであれば
体の最も中心に近いのは【センター】ボーンですから、センターを最初にトレースします。
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◆センター XY座標(グローバル)・Y軸回転(グローバル)
まずはセンターボーンを使い、重心の動きをトレースして行きます。
基本的にセンターのグローバル操作以外は使いません。
0フレームから最終フレームまでセンターのみで一気に進めるもよし、
区切りのいいところまで進めて次のボーンへ移るのもよしです。
これは集中力や好みによって分かれる部分です。
筆者はセンターと上下半身は一気に最初から最後まで進めています。
実際にトレースしていくのは、重心の動きの【起点・頂点・終点】、この3つです。
上下左右(XY座標)の動きに注目してください。前後移動(Z座標)はまだ無視して構いません。
例えば、その場で垂直にジャンプする動作があったとします。
この時、人間の重心はどのような軌道を描いているのでしょうか。
お手数ですが、ちょっと立ち上がって、その場で軽く飛び上がってみて下さい。
その際、自分の【おへそ】の上下の動きに意識を集中して下さい。
おそらく大半の方は以下のような動きになると思います。
1)直立姿勢(起点)
2)軽く沈み込む動作(頂点1)
3)ジャンプして宙に浮く(頂点2)
4)着地。膝がショックを吸収し沈む(頂点3)
5)直立姿勢に戻る(終点)
この(1)~(5)の5つの点、
【動きはじめる瞬間】【最も遠くまで移動した場所】【動き終わった瞬間】
の位置をキーフレームとして登録します。
トレース対象の動きを測る目印としては、
体の中心に近く上半身の回転の影響を受けにくい【おへそ】がよいのですが
服装の関係で直接見えない場合が多いため、
直接見える部分を利用した方が無難かもしれません。
この辺りは好みの問題もあると思いますので、自分のやりやすい方法を探して下さい。
筆者は【おへそ】と【首の付け根】を目標として利用することが多いです。
なお、この段階では重心の移動距離を精密にトレースする必要はありません。
どのみち後で修正が必要になります。
実際の重心から離れている【首の付け根】を利用できるのはそのためです。
ただし、【起点・頂点・終点】のタイミングだけはできる限り丁寧に取って下さい。
動きの中間(ジャンプで上昇中など)の速度変化はズレていても構いません。
補間曲線にも触る必要はありません。
↑首のつけねが大体重なるようにセンターを登録したところ。位置は大まかでOK
見えにくい場合はモデルの半透明化や透明化も積極活用。
なお筆者の場合、センターは90度以上ターンしている場合のみ回転させます。
具体的には
【体ごと横を向く】【後ろを向く】【一回転する】場合はセンターをY軸回転させます。
前回触れた【足の初期化】をした場合、
つま先の向きはセンターの向きが基準になりますので、
足も含めて真横を向いているような場合はセンターごと回したほうが後が楽です。
上の画像のようにつま先が正面を向いているならセンターは回しません。
センターをトレースし終えたのがこちらです。
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◆上半身 XYZ軸回転(ローカル)
その前に念のため確認です。
「ローカル」と「グローバル」の違いはわかりますか?
場面に応じた使い分けができますか?
ギクッ!とした人はここ(チラ裏!補足)を見て下さい。
中段以降に詳しい図解が載ってます。
言語で説明するのがちょっと難しいので、
実際に操作して覚えた方が分かりやすいでしょう。
さて本題ですが、上半身はローカル軸回転でXYZ全てを扱います。
X:上体の屈みor反らし
Y:上体の左右ひねり
※胸がある
Z:上体の体側伸ばし
これらの動きを組み合わせて、上半身をトレース元と同じ形にして行きます。
センターのキーフレームと同じタイミングで揃えて打っていくのが基本です。
こんな感じ。ズレているとカクつきの原因になることがあります。
ただし必要に応じてキーフレームを追加したり削除することも多くありますので、あくまでひとつの指針。
形を整える方法として、筆者は右肩と左肩を結ぶラインを目印にしています。
ゆったりした服の場合は体のラインが見えにくいですが、
肩の形を目印にすると迷わずに済みます。
センターと同じく、一気に最初から最後までやってしまってもいいでしょう。
なお、上半身を回転させてトレス元と位置がズレてしまった場合でも、
よほど大きなズレ以外は気にせずそのまま進めて下さい。
今の時点では元動画とモデルの角度が合っていればOKです。
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◆下半身 XYZ軸回転(ローカル)
腕の角度は【上半身】の回転の影響をダイレクトに受けますが、
同様に足は【下半身】の影響を受けます。
一見地味ですが人体で言うと【腰】にあたり、
文字に「要」と入っているだけあって重要なボーンです。
下半身はローカル軸回転で、XYZ全てを扱います。
X:腰を前後に振る
主にふとももの動きの基点
反復するといわゆるピストン運動
Y:腰の左右ひねり
Z:モデルウォーク
腰をセクシーにふりふり
連動して左右の足の高さが変わることに注意
下半身はおそらく初心者泣かせで、
上半身に比べ見ただけでは角度がよく分からないことが多いです。
目印になるのはベルトのバックル部分やパンツのポケットですが、
トレス元がふわっとしたスカートだと全く見えない場合もあります。
かと言って見た目をごまかして正しいトレースができていないと、
この後の足ボーンで地獄を見ます。
逆に下半身を正しくトレースできていると、足は面白いように進みます。
下半身を上手にイメージするための練習法で一番いいのは、自分でやってみる事です。
ポーズを真似して、やや動きを強調してみて下さい。
その際、ウエストの腰骨(骨盤)に手を当て、
直立姿勢から腰骨がどのように動くか観察すると、ボーンの向いている角度が分かります。
トレス元がベルトをしていない場合、
腰骨の位置にベルトを想像するとイメージしやすいかもしれません。
ベルトをしていたらバックルがどの位置にくるかな・・・?
下半身の動きについて分かりやすいのはこちらの動画。
シリーズ通して見直すのもいいと思います。
慣れてくるとだんだんトレース元の服が透視できるようになり、
ひざの曲がり方や上半身との比較で下半身ボーンの向きがわかりますが、
迷ったときは立ち上がってポーズを取ったほうが早くて確実です。
上半身と同じく、センターのキーフレームを基準として立て揃えに打ちます。
もちろん絶対ということはなく、あくまで目安
体幹トレースは地味な作業なので集中の持続が難しいかもしれませんが、
ここをしっかりやらないと末端の動きがおかしくなります。
センターがカクカクしていると、
頭・指先・つま先に至るまで全ての部位がカクカクします。
そうならないためにも、土台となる体幹のタイミングを丁寧にトレースしましょう。
上下半身をトレースした動画がこちらです。
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ここまでで胴体部、体幹の動きはおおまかにトレスできましたね。
おそらく上下半身を回転させたことで、
トレス元とモデルがぴったり重なっていない部分が増えてきたと思います。
これを今の時点で直しても後でまた修正することになりますので、
とりあえずは角度が合っていれば位置のズレは気にしなくても大丈夫です。
次は足に進んでいきます。一気にダンスらしさが増して、再生するのが楽しくなりますよ。
それではまたお会いしましょう。蔵人でした。
第三回はこちら