2012/04/15

『フカヨミ feat.初音ミク』のトレース(5) ~腕~


MMDモーショントレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。

第4回はこちら




みなさんこんにちは、蔵人です。
前回で胴体・足・頭まではトレースできました。

今日は腕に入って行きますよ。



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第5回 ~腕~ 

◆事前準備

◆肩 
◆ひじ
◆腕

◆指
◆手首

腕は工程が多いですね。自分のペースでやりましょう!
疲れてからではなく、疲れる前に休憩を取るのがコツです。
45分作業して15分休憩、くらいがいいですよ。



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◆事前準備

トレースをする前に・・・いくつかポーズデータを作ります。

肩やひじのように可動方向がある程度決まっている場合、
あらかじめポーズデータとして登録しておいてフォルダからドラッグ&ドロップで読み込むと簡単です。


1)肩

肩は全部で8種類作ります。
まっさらな新規プロジェクトを作って、トレスに使っているモデルを読み込んで下さい。

最初に右肩のローカルZ軸だけを回して【腕を上げた状態】を作ります。




右肩ボーンのみを選択して、ポーズデータの保存。vpdに名前をつけておきます。
筆者のフォルダ階層はこうなってます。参考までに・・・

pose\右肩\右肩01_腕上げ.vpd




次にポーズを反転ペーストして左肩を同じように登録します。
右肩を選択したままにしないよう注意してください。

以下同じ要領で、【Tスタンス】【Aスタンス(初期位置)】【気をつけ】のポーズを左右それぞれ作ります。

↑Tスタンス


↑Aスタンス(初期位置)



↑気をつけ(あまり差がないので、Aスタンスで代用してもOK)





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2)ひじ

肩に続いてひじです。やることは同じ。
ローカルY軸を操作して、4パターンx左右を登録します。

【伸ばし】【少し曲げてる】【直角】【かなり曲げてる】
大体でいいんですけど、ひじの内側の角度が
180度、150度、90度、30度くらいの状態を目安に登録するといいでしょう。


↑少し曲げてる (※ここでは見やすいように腕も操作しています)



↑90度



↑かなり曲げてる












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3)指

指です。
左右別にしてグー・チョキ・パー、指差し、手刀、パクパク・・・くらいあれば足りると思いますが、
作るのが面倒だという人には便利なポーズ集があります。

http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im1834888



こういうライブラリを公開してくださる方には本当に頭が下がりますね。


さて、ここまでポーズができたら準備は終わりです。
フォルダを開いたままにして、トレースのpmmを読み込んで下さい。



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◆肩(D&D)

やることは単純で、肩ボーンを選択状態にしておき
先ほど作成したポーズをドラッグ&ドロップでMMDへ放り込み、エンターで登録する。
この繰り返しです。


目安としては
トレース対象のひじが肩より上にあれば【腕上げ】、
ひじが肩と同じくらいの高さなら【Tスタンス】、
それ以下なら【Aスタンス】、
気をつけしていたり、右手が体の左側まで振れた時などは【気をつけ】
という感じで決めていきます。

振り付けの中で特別に肩を大きく使って躍動感を表現しているような場合
(肩に目が奪われる=肩が主役になっている場合)のみ修正します。



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◆ひじ(D&D)

流れは肩とおなじです。

「なぜ先に腕からやらないのか?」という疑問があるかと思いますが、肩とひじはMMDでの回転軸がある程度決まっていますので、先にこれらをつけてしまったほうが腕を動かす範囲を絞り込む際にやりやすくなります。また、ひじが曲がっている方が腕の回転角度を視認しやすいというメリットもあります。
しばらくやってみて、もし自分に合わないと思ったら別に腕からやって頂いても構いません。

ひじは見たまんまD&Dしていけばいいので簡単ですね。あまり細かく登録せずに、補間に任せたほうが簡単で綺麗になります。

極端に折りたたんでいるなど、作成したポーズで対応できない部分だけ手でつけていきます。


ここまでの動画がこちらです






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◆腕(ローカル/グローバル XYZ軸回転)

肩とひじが先に決まっていれば、腕の回転は自由度を奪われて決めやすくなっているはずです。
ローカル・グローバルのあらゆる回転軸を活用してトレース元と位置をあわせて下さい。


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◆指(D&D)

フォルダからD&D。指先の表情は意外と目立ちます。
同じ「パー」でもピーンと伸ばした反り気味のパー、ちょっと緩めたやわらかいパーと色々なニュアンスがありますね。


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◆手首(ローカルZ回転)

基本、ローカルZ回転のみです。指を先につけたほうが角度を決めやすいです。
場合によっては、ねじる動きの負荷分散で回すこともあるかもしれません。


ここまでの動画がこちらです





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いかがでしょうか?

腕は難関と言われていますが、事前にポーズを作ってD&Dすればそれほど悩まなくて済むため、あまり頭を使わず機械的に作業を進められます。

美麗なモーションを作るにはここからの微調整や補間曲線との果てしない戦いが待っているわけですが、それはもっとモーションの上手い人の講座を見て下さいね。



さて、ここまでくれば完成したも同然!
テンション上がってきちゃいますね。

次回はリップと表情についてです。

それではまたお会いしましょう。蔵人でした。


つづき(準備中)

2012/04/05

『フカヨミ feat.初音ミク』のトレース(4) ~センター・頭部~

MMDモーショントレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。


第3回はこちら


みなさんこんにちは。蔵人です。
前回の記事で足までトレースできました。

それでは次にセンターを調整し、頭を動かしましょう。


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第4回 ~センター調整・頭部~ 

◆センターを調整する 
◆頭部を動かす
◆補間曲線について

今回はあまり書くことがありませんね。

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◆センター XYZ座標(グローバル)


1)Z座標
まずはZ軸からです。


視点パネルを操作して、モデルを右または左から見ます。
前回足をトレースしたので、接地ポイントとのバランスを見て違和感がなくなるように重心を前後させていきます。



↑【左面】【右面】を押してね!


横から見てセンターの前後の位置を調整・・・。転ばないようなバランスで


センターのキーフレームは新たに打つことはせず、すでに打ってあるフレームの調整に留めます。
もしモデルがグルーブボーンを搭載していて、配布モーションにもグルーブを含めてよいと判断した場合、ここでZ軸のみをグルーブに負担させることで調整はかなり楽になります。

例)
センター → XY座標・Y軸回転
グルーブ → Z座標

グルーブは本来的にはセンターの移動と切り離して縦ノリを再現するための多段ボーンですが、別にZ軸に使ったからといって問題ありません。ベクトルを分解して調整を簡単にするという趣旨は同じです。

また、正面視点の元動画からはどうあがいても正確なZ位置は分かりませんので、あまり神経質にならずに感覚優先で大丈夫です。

色々な方が作成されたモーションをDLしてみれば分かりますが、上下左右のどこから見ても滑らかなモーションというのは極めて稀で、達人レベルのほんの数人が超絶な時間をかけたであろうものに限られています。

入門レベルでそこまでやると時間・労力・モチベーションの面で現実性が乏しくなりますので、まずは正面視点での正確さを第一に置き、その他の視点ではとりあえず違和感の軽減を目標にする程度でよいのではないでしょうか。



2)XY座標
Z軸の調整が済んだら視点を正面に戻し、XY座標をモデルとトレス元が重なるように調整します。


これで肩から足首までのシルエットはほぼ一致しているはずです。
大きくズレているようなら適宜修正して下さい。



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◆頭部


(※筆者が苦手とする部分ですので、後から加筆・修正がなされる場合があります。)


基本的にセンターのキーフレーム位置に合わせて打っていきます。
その方が意図しないカクカクを防げます。

頭部というと具体的には【頭】と【首】になるのですが、筆者はこの部位の使い分けがまだうまくできません。

XY軸回転とZ回転を分担させるのがいいのか、XZ軸回転とY軸に分けるのがいいのか…。それともベクトルで分けずに首単独で動かして頭を補助として使うのか、など試行錯誤を重ねている途中です。

ちなみにフカヨミのモーショントレースにおいては首をメインに3軸稼働させ、頭を補助として使っています。


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◆補間曲線について


初心者最大の壁とも言える補間曲線ですが、体幹と足に関してはこのタイミングで調整を施すのがいいかもしれません。


もちろんステップごとに調整してもよいのですが、フレームを打ち直すと消えてしまったりと不便な部分もありますので、まとめてやってしまった方が楽だと思います。


補間曲線に馴染みのない方はとっつきづらく感じると思いますが、これはモーション調整を楽にするための機能ですので、最初に覚えてしまったほうが後々の作業コストは軽減できます。


ちなみにフカヨミのモーショントレースでは実験的に「補間曲線を使わずに中割を増やす」という手法で調整をしています。どちらが楽か?どちらが速いか?という研究なのですが、結論は「使い分けたほうがいい」という無難なものになりそうです。


補間曲線については解説の動画がたくさんあるのでそちらをご覧ください。









頭までトレースした動画がこちらです
(※補間曲線はいじっていません)




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話は違いますが、解説動画をちゃんと作れる人って凄いですよねえ・・・。

筆者は講義形式で人前に立ってレクチャーするのは得意ですが、動画でわかりやすく教材にまとめるというのは苦手です。なぜって面倒くさいから。

面倒な事は大嫌い!手間を省いて成果を得たい、これが蔵人流です。

上の動画の方々はきっと面倒な事を乗り越えることが喜びなんでしょうねえ・・・。
筆者がちっとも成長しないのは面倒から逃げているせいなのでしょう。





さて、だいぶ形になってきたのではないでしょうか。
次回は腕ですね。難関ですが、ここも出来る限り省力化するコツをご紹介していきたいと思います。

それではまたお会いしましょう。蔵人でした。


つづきはこちら


2012/03/27

『フカヨミ feat.初音ミク』のトレース(3) ~足~

モーショントレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。


第2回はこちら







色々な表情のウェストショットを
撮ったのに
特に使い所がありませんでした…










みなさんこんにちは。蔵人です。
前回の記事で体幹までは無事にトレースできました。

それでは次に足を動かして行きましょう。


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第3回 ~足~ 

◆足IK 
◆足首が暴れる原因と対処法
◆つま先を中心に回転させるテクニック


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◆足IK XYZ座標(グローバル/ローカル)・Y軸回転(ローカル)






IKをオフにするとモーションを読み込む時にもIKオフの設定が必要になりますので、
通常のトレースの場合はIKオン(初期設定)のままにします。




初期位置とパースがきちんと合っている場合、
モデルとトレス対象の足の見た目が一致するように置いて行くと
自然にZ座標も含めた角度がわかります。





単純に見た目が重なるように置いていく




そのため、見た目を一致させることでZ位置をトレースできるよう、
初期位置とパースをできるだけ正確に合わせておくほうが楽なのです。




それでは足首のあたりを目印に、起点・頂点・終点をトレースします。




筆者のやりかたではまず接地点から接地点へX・Z座標を動かしてキーを打ち、
それから間の宙に浮いている部分のY座標を動かして登録します。
何を言ってるかわからないと思いますので、この動画をどうぞ。





モーショントレースの動画ではありませんが、
1:03~の説明が分かりやすいと思います。



動きのメリハリを出すためには
いわゆる「重力を感じるモーション」に仕上げることが肝心なのですが
簡単な方法はセンターを下げることです。




センターボーンを範囲選択してバイアス付加でY値をマイナス補正すれば
かなり重みが出ます・・・が、常に膝が曲がった状態になりますので
元動画で膝が伸びている箇所は修正する必要があり、
最初から沈み込む場所だけ選んでセンターを下げるのと
手間があまり変わらない気がしないでもないです。






さて、トレス元が前後に大きく動く場合、足が届かないことがあります。
そういったケースはすでに打ってあるセンターのキーを選択し、
Z座標をアバウトに調整して下さい。





届かないときはセンターを動かす




この時新たにキーは打たず、すでに打ったキーで調整します。




センターは大体合ってるはずなのに
どうしても足が地面に届かない、あるいは大きくめりこむといった場合は
下半身の回転がおかしいか、そもそもパースが大きくズレている恐れがあります。


一人で解決できない場合は誰かに助けを求めてもいいでしょう。
つまづくところは大体同じはずです。
VMDやVPDを書きだし、途中経過動画と一緒にデータをUPして添削を求めるか
2chの底辺スレ、したらばの初心者スレやモーションスレなどで指導を仰ぐか
メールやツイッターで筆者に連絡して頂いてもいいです
(100%の回答は約束できませんが…。)




Youtube板      http://anago.2ch.net/streaming/
したらばMMD板  http://jbbs.livedoor.jp/music/23040/




※いずれもローカルルールやテンプレをよく読んで書きこんで下さい。
「初心者だから」は通用しないので注意して下さい。




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◆足首が暴れる原因と対処法




足首がぐるんぐるんと回るのは、
センターの向き・下半身の向き・足IKの向き・足の向きが怪しいと思って下さい。
これらのうちどこかが現実にはありえない方向を向いていたりするとよく回ります。



正しい位置





【足】のY軸を回したところ





【足IK】のY軸を回したところ





【センター】のY軸を回したところ





【下半身】のX軸を回したところ




どうでしょう? 足首の向きは
足そのものと同じくらいに下半身やセンターが影響することが分かるでしょうか。



そのため、足首が暴れるのはどこかが間違っているというサイン。
無理やり足首を修正して直すのではなく、姿勢の方を見なおしてみましょう。





それでも直らない場合は、まずは初期化です。
下半身・足IK・足を初期化して、もう一度正しく回します。




初期化した後は【ボーン編集】⇒【Y値0化】をする癖をつけます。
これがズレているのに気づかず進めると後で悲惨です。




初期化して慎重に回せば大体は直るのですが、それでもまだおかしい場合は
足首ボーンを連続打ちで固めてしまう手もあります。



こんな感じで・・・。




ただし、ここでガッチリ足首を固めてしまうと
この後センターの位置を調整した場合にかえって足首がおかしくなるので、
もし足首ボーンをいじるならセンターの位置修正が終わり、
キーフレームが完全に定まってからの方がいいと思います。
二度手間になりますので。




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◆つま先を中心に回転させるテクニック




上級者でも手こずると言われたり言われなかったりする【つま先ターン】の扱い。
有名なテクニックとして「足IKとつま先IKを同時選択して回す」というものがあります。
面倒なので解説はリンク先へ丸投げです。





↑5:10~に説明あり



↑冒頭からつま先処理の話です




この小技を使えばだいぶラクになります。








●足をトレースした動画はこちら





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解説をたびたび他の動画やブログへ丸投げしていますが、
すでにある財産を有効に活用するのはMMDの根幹理念ですからね!


ついでに申し上げておくと、
そういった解説をどこで誰が行なっているのかを知っているということは、
筆者がそれだけ熱心に解説動画やブログを読んで研究している
ということの裏返しでもあるわけです。



その上でいいと思ったもの、わかりやすいと感じたものは
堂々と人に紹介していきますよ!




さて、今日は足までトレースできました。


足の位置が判明したところで
次回は重心を再度調整し、補間曲線をいじった後で
頭へと移っていきます。


それではまたお会いしましょう。蔵人でした。




つづきはこちらです



2012/03/19

『フカヨミ feat.初音ミク』のトレース(2) ~センター・上下半身~

トレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。


第1回はこちら





実家の裏庭にアスパラが自生してます









みなさんこんにちは。蔵人です。
前回の準備編で、トレース作業に入る準備はできました。

それではいよいよ実際のトレースに着手してみます。
本日のチェック項目は以下のようになっています。


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第2回 ~胴体~

◆なぜこの順番でトレースするのか?
◆センター
◆上半身
◆下半身


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◆なぜこの順番でトレースするのか?



なぜ最初に胴体部分(体幹)からトレースするのでしょうか?


今回のトレースは標準ボーンのみで行なっているため、
モデルは腕IK(※)やキャンセルボーン(※)を持っていません。
そのため、体幹の動きが指先やつま先といった末端までダイレクトに伝わります。


ゆえに、体の中央から末端に向けてモーションを作って行くことが基本となります。
例えば上半身より先に腕を作ってしまうと、
後で上半身をひねった場合、それに連動して腕の位置も変わってしまうからです。


※腕IKやキャンセルボーンの詳細については本筋から離れますので、
興味の有る方は下記の動画をご覧下さい。




というわけで、通常の人型モデルであれば
体の最も中心に近いのは【センター】ボーンですから、センターを最初にトレースします。


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◆センター XY座標(グローバル)・Y軸回転(グローバル)



まずはセンターボーンを使い、重心の動きをトレースして行きます。
基本的にセンターのグローバル操作以外は使いません。


0フレームから最終フレームまでセンターのみで一気に進めるもよし、
区切りのいいところまで進めて次のボーンへ移るのもよしです。
これは集中力や好みによって分かれる部分です。
筆者はセンターと上下半身は一気に最初から最後まで進めています。


実際にトレースしていくのは、重心の動きの【起点・頂点・終点】、この3つです。
上下左右(XY座標)の動きに注目してください。前後移動(Z座標)はまだ無視して構いません。


例えば、その場で垂直にジャンプする動作があったとします。
この時、人間の重心はどのような軌道を描いているのでしょうか。


お手数ですが、ちょっと立ち上がって、その場で軽く飛び上がってみて下さい。
その際、自分の【おへそ】の上下の動きに意識を集中して下さい。


おそらく大半の方は以下のような動きになると思います。

1)直立姿勢(起点)
2)軽く沈み込む動作(頂点1)
3)ジャンプして宙に浮く(頂点2)
4)着地。膝がショックを吸収し沈む(頂点3)
5)直立姿勢に戻る(終点)









この(1)~(5)の5つの点、
動きはじめる瞬間】【最も遠くまで移動した場所】【動き終わった瞬間】
の位置をキーフレームとして登録します。


トレース対象の動きを測る目印としては、
体の中心に近く上半身の回転の影響を受けにくい【おへそ】がよいのですが
服装の関係で直接見えない場合が多いため、
直接見える部分を利用した方が無難かもしれません。
この辺りは好みの問題もあると思いますので、自分のやりやすい方法を探して下さい。
筆者は【おへそ】と【首の付け根】を目標として利用することが多いです。


なお、この段階では重心の移動距離を精密にトレースする必要はありません。
どのみち後で修正が必要になります。
実際の重心から離れている【首の付け根】を利用できるのはそのためです。


ただし、【起点・頂点・終点】のタイミングだけはできる限り丁寧に取って下さい。
動きの中間(ジャンプで上昇中など)の速度変化はズレていても構いません。
補間曲線にも触る必要はありません。


↑首のつけねが大体重なるようにセンターを登録したところ。位置は大まかでOK
見えにくい場合はモデルの半透明化や透明化も積極活用。


なお筆者の場合、センターは90度以上ターンしている場合のみ回転させます。
具体的には
【体ごと横を向く】【後ろを向く】【一回転する】場合はセンターをY軸回転させます。


前回触れた【足の初期化】をした場合、
つま先の向きはセンターの向きが基準になりますので、
足も含めて真横を向いているような場合はセンターごと回したほうが後が楽です。
上の画像のようにつま先が正面を向いているならセンターは回しません。


センターをトレースし終えたのがこちらです。





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◆上半身 XYZ軸回転(ローカル)


その前に念のため確認です。
「ローカル」と「グローバル」の違いはわかりますか?
場面に応じた使い分けができますか?

ギクッ!とした人はここ(チラ裏!補足)を見て下さい。
中段以降に詳しい図解が載ってます。

言語で説明するのがちょっと難しいので、
実際に操作して覚えた方が分かりやすいでしょう。







さて本題ですが、上半身はローカル軸回転でXYZ全てを扱います。



X:上体の屈みor反らし




Y:上体の左右ひねり

※胸がある


Z:上体の体側伸ばし




これらの動きを組み合わせて、上半身をトレース元と同じ形にして行きます。
センターのキーフレームと同じタイミングで揃えて打っていくのが基本です。



こんな感じ。ズレているとカクつきの原因になることがあります。
ただし必要に応じてキーフレームを追加したり削除することも多くありますので、あくまでひとつの指針。




形を整える方法として、筆者は右肩と左肩を結ぶラインを目印にしています。


ゆったりした服の場合は体のラインが見えにくいですが、
肩の形を目印にすると迷わずに済みます。


センターと同じく、一気に最初から最後までやってしまってもいいでしょう。

なお、上半身を回転させてトレス元と位置がズレてしまった場合でも、
よほど大きなズレ以外は気にせずそのまま進めて下さい。
今の時点では元動画とモデルの角度が合っていればOKです。


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◆下半身 XYZ軸回転(ローカル)




腕の角度は【上半身】の回転の影響をダイレクトに受けますが、
同様に足は【下半身】の影響を受けます。
一見地味ですが人体で言うと【腰】にあたり、
文字に「要」と入っているだけあって重要なボーンです。









下半身はローカル軸回転で、XYZ全てを扱います。





X:腰を前後に振る


主にふとももの動きの基点
反復するといわゆるピストン運動




Y:腰の左右ひねり




Z:モデルウォーク



腰をセクシーにふりふり
連動して左右の足の高さが変わることに注意




下半身はおそらく初心者泣かせで、
上半身に比べ見ただけでは角度がよく分からないことが多いです。
目印になるのはベルトのバックル部分やパンツのポケットですが、
トレス元がふわっとしたスカートだと全く見えない場合もあります。

かと言って見た目をごまかして正しいトレースができていないと、
この後の足ボーンで地獄を見ます。
逆に下半身を正しくトレースできていると、足は面白いように進みます。


下半身を上手にイメージするための練習法で一番いいのは、自分でやってみる事です。
ポーズを真似して、やや動きを強調してみて下さい。
その際、ウエストの腰骨(骨盤)に手を当て、
直立姿勢から腰骨がどのように動くか観察すると、ボーンの向いている角度が分かります。


トレス元がベルトをしていない場合、
腰骨の位置にベルトを想像するとイメージしやすいかもしれません。


ベルトをしていたらバックルがどの位置にくるかな・・・?


下半身の動きについて分かりやすいのはこちらの動画。
シリーズ通して見直すのもいいと思います。




慣れてくるとだんだんトレース元の服が透視できるようになり、
ひざの曲がり方や上半身との比較で下半身ボーンの向きがわかりますが、
迷ったときは立ち上がってポーズを取ったほうが早くて確実です。


上半身と同じく、センターのキーフレームを基準として立て揃えに打ちます。


もちろん絶対ということはなく、あくまで目安


体幹トレースは地味な作業なので集中の持続が難しいかもしれませんが、
ここをしっかりやらないと末端の動きがおかしくなります。
センターがカクカクしていると、
頭・指先・つま先に至るまで全ての部位がカクカクします。
そうならないためにも、土台となる体幹のタイミングを丁寧にトレースしましょう。



上下半身をトレースした動画がこちらです。





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ここまでで胴体部、体幹の動きはおおまかにトレスできましたね。
おそらく上下半身を回転させたことで、
トレス元とモデルがぴったり重なっていない部分が増えてきたと思います。

これを今の時点で直しても後でまた修正することになりますので、
とりあえずは角度が合っていれば位置のズレは気にしなくても大丈夫です。

次は足に進んでいきます。一気にダンスらしさが増して、再生するのが楽しくなりますよ。


それではまたお会いしましょう。蔵人でした。



第三回はこちら



2012/03/16

『フカヨミ feat.初音ミク』のトレース(1) ~準備~

トレース初心者向けに、自分なりのコツなどをご紹介。
FREELY TOMORROWのモーションファイルに同梱したテキストの改訂版です。


この記事では
「モーション配布を前提に、標準ボーンでなるべく元動画の動きを忠実にトレスする」
ことを目標としています。


1)準備
2)センター
3)上下半身
4)足
5)センター修正
6)頭
7)肩
8)ひじ
9)腕
10)指
11)手首
12)表情
13)仕上げ

とまあ、これだけのプロセスを踏むわけでございますが、
まとめられる所はまとめて見て行きましょうね。長いと疲れるので。筆者がね。


筆者が書いているのでなく、おやぶん式ミクさん(通称ぶんちゃん)が喋ってると思って読むと集中力が途切れないで済むでしょう。画像をつけておきます。親切設計です。




<トレスは楽しいですよ!










特に斬新な手法や独自の理論はないと思いますので、
初めての方はdanchoPの講座でも見てイメージをつかんで下さい。


他にも以前の記事で色々な動画を紹介しています。

このburoguでは講座を見ていて自分が分かりにくかった部分や
つまづいたところの補足を備忘録として書き残しておくつもりです。



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第1回 ~トレス前の準備~

今回は以下の項目について見ていきます。

◆標準ボーンのメリット・デメリットを把握する
◆ボーン表示枠の変更(PMDE)
◆「全ての親」について
◆背景動画のfpsチェック
◆マルチモニタ(MME)
◆パースと初期位置



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◆標準ボーンのメリット・デメリットを把握する

そもそも、なぜ標準ボーンでトレスをするのでしょうか?
改造ボーンとの比較をしてみましょう。



 ・標準ボーン
◎ 多くのモデルに対し、モーションを読み込むだけで適用できる
☓ モーションの精度に難があり、調整に手間がかかる

 ・改造ボーン
◎ 動きをより滑らかに、自然な表現が作りやすい
◎ 成分分解によりモーション作成や調整が容易になる(モーションのレイヤー化)
☓ そのままでは他のモデルに読み込めず、モデルを改造する必要がある


改造ボーンの威力…
百聞は一見に如かず、こちらをご覧下さい。


↑この図を見れば分かる通り、こちらのモデルは徹底した多段化がされています。
これだけの改造を施したカスタムモデルのモーションは一般配布されないのが通常です
(配布されても同じ改造を施したモデル以外では使えません)。


また留意すべき点として、動きはため息が出るほど美しいのですが
「トレス元の動きに忠実か」と言われると、おそらくノーです。
この点についてはボーン改造の有無とは別に、トレース前に考えておくべきでしょう。


すなわち、
元動画と作成したモーションを並べて比較し、完全に一致している様子を見て楽しみたいのか。
振り付けをモデルに合わせて調整し、モデル単体での動作の自然さにうっとりしたいのか。
という方向性の違いです。


どちらが正しいとかレベルが高いとかいう話ではなく、純粋に好みの問題です。
正確なトレースを第一にするのか、自然なモーションの作成に重点を置くのか。
ちなみに筆者は前者よりですね。


さて、別に改造をせずとも標準ボーンで自然なモーションを作ることは十分に可能です
(事実、配布されている名作モーションの大部分は標準ボーンで作られています)。
が、なるべく楽をしたいので使えるものは使って行きたいところです。


実際には、トレース時にもいくつかのボーンを追加して使用するのが現実的です。
PMDEの準標準ボーン追加プラグインを使うことで、
知識がなくともほんの数ステップの操作で簡単にボーン改造を行うことができますから、
準標準ボーンはカスタムモデルとは異なり、共通規格と捉えて構わないでしょう。
こだわりが無い限りは上半身2やグルーブあたりは使ってもいいと思います。


ただし、ボーンが増えモーションの自由度が増えるほど操作は煩雑になりますので、
最初は標準ボーンのみである程度トレースをしてみて、
後から「準標準ボーンはこんなに便利なのか!世界が変わった!」
というステップを踏んだほうが効果的かもしれません。



筆者の場合は、準標準ボーンのありがたみをより強く実感するために
敢えて標準のみで挑戦していましたが、次回は準標準ボーンを解禁して挑むつもりです
(※この記事は標準ボーン前提で書かれています)。


ただし、「準標準ボーンのプラグインを使って下さい」という一言を添えただけで
配布されたモーションを使うユーザーは激減し、
さらにreadmeや注意書きを読まずに標準ボーンへ読み込んで破綻したモーションのまま
動画にして投稿する人は確実に出る、らしいです。


<まとめ>

・標準ボーンを使うのは、配布した時により多くの人にモーションを使ってもらうため。
・独自のカスタムモデルを使えば自然なモーションが作りやすいが、配布には向かない。




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◆ボーン表示枠

ボーン構造自体は標準ですが、表示枠は下図のように変えています。




























人によって表示枠の使いやすい順番は差があるようで、
「トレースする順に上から並べる」という人もいれば
実際の人体を模して「頭・上半身・腕・指 下半身・足」と並べる人もいるようです。
筆者は・・・デタラメな配置ですね。特に理由はありませんが、これで慣れてしまいました。
順番はともかく、左右は分けたほうが視認しやすい上、反転コピーが使いやすくなります。


表示枠はPMDEにデフォルトで編集機能がついていますし、
専用のプラグインも配布されていますので簡単に変えられます。


<まとめ>


・表示枠は使いやすいように変更しよう



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◆「全ての親」の有無

トレースで使用するモデルに「全ての親」がある場合は
【全ての親】を削ってしまった方がトレースが少し楽になります。

そのままでも特にクリティカルな問題があるわけではないので、
モデルを改造したくない場合は無理をしなくても大丈夫ですが、
作業効率は変わってきますので実際にどう違うのか見てみましょう。


1)まずは適当なポーズをとらせて・・・。(ポーズデータは美少女フィギュア100人斬り





















2)ここで足の動きをトレースするために、【左足IK】を【初期化】したとします。
初期化はトレース中に割と頻繁に使う機能です。

↓まずは全親なし(センターのみ)の場合。





















↑左足が体の中心(センターボーン)に従ってリセットされ、
おへそから真下の位置に来ましたね。
足首から下は地面にめり込んでいますが、【Y値0化】をすると綺麗に接地します。


↓では次に【全ての親】がある場合。





















↑見比べてみると分かりますが、初期化した後の左足の位置が異なります。


3)比較してみましょう。





















↑「全ての親あり」の場合は足IKがリセットされる基準が【全ての親】の位置になり、
「全ての親がない」場合はセンター位置に追従することが分かります。
赤くなっているボーンがそれぞれ【全ての親】と【センター】です。

このサンプル画像では【全ての親】と【センター】の位置がそれほど離れていないため
大きな違いはなさそうに思えますが、トレースしていくうちに両者が離れていくと・・・



↑こうなるともう【初期化】の意味がありません。
トレースする上でボーンをいじりすぎて変な角度にねじれたり
ボーンの向きが分からなくなった時にとりあえず初期化をすることが多いのですが、
毎回こんな位置に持っていかれたのでは面倒この上ないです。


・・・というわけで、PMDEで「ボーン」タブを開く→「全ての親」を右クリック→「削除」→別名保存
手順はこれだけですから、トレースを始める前にさっさとやってしまった方がいいと思います。















<ここで耳寄り情報>
モーション作成に特化した、ver2カスタムが公開されています。

【特長】
・表示枠は部位別、左右振り分けカスタム済!
・モーション作成に適した、「全ての親」なしモデル!
・モーフで袖を出すこともでき、単体でver2ミクさんのモーションを作成可能!
・トレス時には邪魔で仕方ないツインテをお団子に!
















手間を省きたい方や改造に自信のない方にお勧めです。
MMDデータ保管所@mahiro



<まとめ>


・【全ての親】は削除した方が楽


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◆背景動画(トレース元動画)のfpsチェック

続いて背景動画のチェックです。
ニコニコ動画から入手した動画は大抵mp4形式だと思いますので、
MMDで読み込むためにaviに変換するわけですがここで注意がひとつ。


動画のフレームレート(fps)は必ず確認して下さい。
29.97fpsの動画がかなり多く見受けられますが、
MMDに読み込む際は30fpsにする必要があります。


29.97fpsの元動画を使ってしまった場合の影響については、VPVPwikiのここに載ってます
簡単に言うと音ズレが発生するということなのですが、
以前私はこれを知らずに動画を一本作ってしまったことがあります。
その際は後半に行くに従ってどんどん音ズレする動画を
premiereで速度変更して帳尻を合わせました。


fpsの確認と変換はaviutlを使うのが簡単です。もちろん他の方法でも構いません。
フカヨミの場合は・・・











↑これも29.97fpsですね。
aviutlの拡張AVI出力プラグインplusを使えばfpsを一発で変換できます。















ついでにAviutlでWaveも出力しておきましょう。




<まとめ>

・背景動画のfpsは30にする



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◆マルチモニタ(MME)

↓DLはこちらから(ビームマンP)




↑このように、他視点のサブカメラを追加することができます。
画像では2つ同時使用ですね。


MMDでのモーショントレースは正面視点で行うことが多いのですが、
単一の視点で作業を続けていると落とし穴が待っています。

例えば次の画面をご覧下さい。

















↑一見、ちゃんとトレースできているように思えます。
しかしカメラを側面に回してみると・・・



















↑実はこのように、センターの位置が大きく傾いて今にも後ろへ倒れそう。
右手は前に出ていて左手は鎖骨にくっついているというちぐはぐな状態でした。


これを防ぐために3DCG ソフトでは視点分割が実装されている場合が多いようですが、
MMDにはその機能がないため上掲のMMEエフェクトを使います。


















↑正面からトレースしつつ、リアルタイムに横からの視点で姿勢をチェック。
このエフェクトを使わない場合は、
毎回キーフレームを打つたびにカメラをぐるぐる回して確認する必要があります。
何か特殊な事情がない限り、素直に導入をお勧めします。




<まとめ>


視点変更の手間を減らすためにマルチモニタエフェクトを導入する。




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さてこの記事も長くなって来ました。集中力が落ちてませんか?特に筆者が。

しかし、準備段階できちんと手順を踏まないと、
今後数週間から数ヶ月かけて作るであろうトレースがろくでもない出来になる危険があります。
土台から間違ったビルの傾きにあとで気づいても修正は難しいのです。
休憩を挟んでもいいので、もう少しだけ見ていきましょう。




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◆パースと初期位置を合わせる


パースそのものの詳しい説明は省きますが、
この記事においては「視野角とカメラ位置によって構成される、画面の見た目」を指します。

MMDの視野角については
動画を作ってみよう!・5~カメラについてもう少し詳しく(はじめてのMikuMikuDance)
MMDの標準ミクさんを可愛く撮るためのTipsと自己流カスタマイズの紹介(DONburiroom)
などが分かりやすいと思います。

元の動画とMMDのパースが合っていないと、
見かけの上ではモデルの動きを精密にトレスしたつもりでもデータ上は整合性がとれず
姿勢や動きに歪みが生じる恐れがあります。特に奥行きへの影響が顕著です。


元の動画にパースの目標となるものがあれば、それを目安にグリッドを合わせていきます。


パースの目標物が多ければ多いほど正確にカメラを決められますので
トレス元を選ぶ際にはこの点にも注目してみるといいかもしれません。


ただ、前後移動が少ないモーションの場合はそれほど大きな影響は出ませんので
神経質になる必要はないと思います。



パース目標:多い













パース目標:ふつう













パース目標:少ない(前後移動があまりないので影響は少ない)












MMDをカメラモードにして視野角とカメラ位置を調整したら、
モデルとトレス対象の位置をぴったり合わせてカメラをキーフレーム登録します。
これがトレース作業中のデフォルトのカメラ位置になります。


トレス中はモデルのボーンを操作しつつ、
視点を上下左右に動かしたり回転させることもありますが
視点操作パネルの【カメラ】を押すことですぐにデフォルト位置に戻すことができます。


↓モデル操作中、視点の移動はここで(回転はマウスで右ドラッグ)



























↑【カメラ】を押すと視点が最初にパースを合わせた位置に戻りますので、
動作の確認はその状態で行います。


余談ですが他の方のトレス動画を見ていると、
視野角やカメラの上下(Y移動、X回転)を調整しないまま
見かけのポーズだけ合わせているのでは?と思われるものがたまにあります。
出力時にそうしているだけなのか、トレス中もそのままなのか・・・。
余計なお世話かもしれませんが、心配ですね。


<まとめ>


・パースを合わせてカメラ登録する。
・トレース中にはその都度【カメラ】ボタンで視点をリセットする。



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さて、長い説明でしたがようやくこれでトレースの準備が整いました。
すでにげっそりしている筆者もいますが、多分この項目が一番長くて
後は「気合で」とか「勘とセンスで」とか「適当に」とかそういう表現が増えるので安心してください。
それを安心というのかどうかは判断がわかれるところですが・・・。


筆者自身もトレースに関してまだまだ勉強中で至らない点は多いかと思いますが
こうして書いておかないと次に作業する時に自分が忘れてしまうので、
その保険としての意味もあります。


実際、FREELY TOMORROWを作った後1ヶ月近くMMDを放置し、
フカヨミに取り掛かったらトレースの段取りが頭から消えてました。
こうして毎回経験値をリセットするのが筆者の最大の難点なので
記録しておくことが数カ月後の自分にとっても役立つに違いありません。


それではまた次回お会いしましょう。蔵人でした。


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